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作品に関するお知らせ

意味のあるものだけを伝えられるアニメーション表現は、短時間で壮大な世界を提示することも可能である。大友克洋が製作総指揮と総監督をつとめた『MEMORIES(メモリーズ)』は、その機能を実証したオムニバス映画と言える。

公開年は1995年、押井守監督の『GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊』や庵野秀明監督の『新世紀エヴァンゲリオン』と同じ年である。手描き作画にデジタル技術を交えて表現域を拡張し、21世紀への橋渡しをした点でも歴史的な作品群だ。その中でも突出した挑戦的な作品が『MEMORIES』と言える。以下、3タイトルのみどころを紹介していこう。
「Episode.1 彼女の想いで(Magnetic Rose)」は、「大友克洋短編集 彼女の想いで」 (90年、講談社刊)に収録された宇宙SF短編が原作で、アニメ企画の原点でもある。西暦2092年、宇宙のゴミを回収する作業船「コロナ」は救難信号を受信し、宇宙ステーションの廃墟へ向かった。そこにはロココ風建築のゴージャスな空間が広がっていた。緻密に描き込まれたメカ類、立体的に乱舞するデブリの冷たさと、クラシックな芸術様式の対比が圧巻である。無重力下における人や物体の挙動も、アニメーション作画とCGの組み合わせで正確に描かれている。

現実のように見えるまがい物の料理、草原の中に見え隠れする美女の映像など、次第に非現実性が高まっていく緊迫感が大きなみどころだ。題名の「彼女」とは「オペラ歌手エヴァ」のことなのだが、その妄執がやがてクルーを巻きこんでいく。精神に直接影響するサイコサスペンスの恐怖と、プッチーニのオペラ「蝶々夫人」などのモチーフを交えた菅野よう子の壮大なクラシック音楽が一体化する幻惑感は、他に類を見ないものだ。
監督は1988年の大友克洋原作・監督の『AKIRA』では作画監督補をつとめた森本晃司が担当。特筆すべきは脚本・設定を『パーフェクトブルー』(98)で監督デビューする前の今 敏が手がけていることである。漫画からアニメへ活動の軸足を動かした時期で、物語展開と一体となった今 敏の美術設定、レイアウトの圧倒的な表現力が素晴らしい。

「Episode.2 最臭兵器(Stink Bomb)」は原作・脚本・キャラクター原案を大友克洋が描きおろしたブラックコメディで、一転してライトなドタバタ劇が楽しめる。
物語は山梨県甲府市から始まる。製薬会社の研究員・田中信男は、風邪薬と勘違いして偶然精製された実験薬を飲んでしまった。人体の新陳代謝を再構築し、強力な臭気を発生させる新薬だったのだが、田中はそれを知らされないまま、実験薬を東京へ輸送することを要請される。

人を死に至らしめ、機械類を誤動作させる臭気ガスを発生する田中は、動く生物兵器と化してしまった。刻々と東京へ近づく田中、拡大する被害地域に、自衛隊は陸海空の全部隊を災害派遣に出動させた。在日米軍は生物兵器の出現に何ごとかを企む一方、真実を知らない田中の行動は終始サラリーマンの忠実さを実直に遂行する、この落差の味わいが本作の特徴だ。
監督は岡村天斎が担当(後に『WOLF'S RAIN』(02)を監督)。他の2作はスタジオ4℃の制作だが、「Episode.2」のみマッドハウスが担当した。大友克洋の希望で濃厚な作風で知られる川尻善昭も参加し、特殊車両、艦艇、航空機類など現用兵器がすさまじい作画枚数で圧巻の物量戦を展開する攻防戦を監修している。

オムニバスを締めくくる「Episode.3 大砲の街(Cannon Fodder)」は、史上屈指の異色作だ。なんと20分の長さを「ワンシーン・ワンカット」で描きぬいたのである。原作・監督・脚本・キャラクター原案・美術とすべてを大友克洋が手がけ、抑えた色彩やディテールの多い質感の特異さでも全編のクライマックスに相当する。
舞台は壁に囲まれたクラシカルな城塞都市で、全市民が果てしなき砲弾戦を続けていることが描かれる。蒸気機関と火薬を中心とした世界観の点で『スチームボーイ』の前哨戦的なポジションでもある。映像は、とある労働階級の家庭から少年が目ざめる場面からスタートする。ところが画面はそのまま少年を追い、居間の朝食から父親と少年が家を出る出勤・登校へとシームレスに推移していく。

つまりカメラワークは被写体の少年を「フォロー」しているわけだが、部屋から部屋に移動してもカットを割らずに続いていく。カメラ移動の中でエレベーター内から都市の全景と砲塔を備えた家屋群を示し、駅舎の中で移動する群衆を見せ、砲台への装填や上級軍人の儀式化された砲撃が描かれる。まさに題名のとおり「大砲」を中心にすべてが回っている。
一種のディストピア表現ではあるものの、滑稽でもあり、現実世界の歴史と照応すると「戦争やプロパガンダ」の怖さと異常さも投影されていて、「本質はあまり変わらないのでは?」という問いかけが迫ってくる。
この大半を「セル画と背景画」という伝統的な平面素材を使い、フィルムの撮影台上で可能な表現を駆使して「全体でひとつの時空間」を実現した意図について、大友克洋は「絵巻物」の体感をめざしたと語っている。アニメ映像は本来、短いカットのモンタージュを積みかさねて成立している。
置き間違いやシャッターミスで容易に連続性が破綻するため、避けられていたアナログ撮影の「長回し」を実現したのは、「技術設計」でクレジットされた片渕須直(後に『この世界の片隅に』(16)を監督)だ。合作企画『リトル・ニモ』のパイロットフィルムにおける演出補佐の経験を活かし、大友克洋が絵コンテで提示した連続性を、撮影可能な背景原図やセルワークへと展開した。撮影指示用の目盛りを緻密にレイアウト上に描きこみ、モーションコントロール装備のカメラに移動間隔を記憶させて実現したという。

最終的にはカメラ移動の途中で次の素材に置き換え、オーバーラップやオプチカル・プリンターで繋いでいるが、それでも対処できない部分のみ、発達過程にあったCG(CGIとクレジット)で対処している。いつまでもいつまでも果てしなく続いていくアニメ映像は、観客に独特の幻惑感を生じさせる。デジタル技法でない「手描きの触感」は「あり得ない世界への没入感」を誘う。
オープニングとエンディングは石野卓球による音楽で、この個性あふれる3部作をサンドイッチしてワンパッケージとしてまとめている。別世界の人間の「記憶(メモリー)」を垣間見たような、幻惑の体験が味わえるオムニバス映画なのである。
文:氷川竜介(アニメ特撮研究家)
<発売情報>
MEMORIES 4Kリマスターセット (4K ULTRA HD Blu-ray & Blu-ray Disc)
2025年12月24日発売
価格:¥15,400(税込)
▼『MEMORIES』information Site
https://v-storage.jp/sp-site/memories30th/
©1995 マッシュルーム/メモリーズ製作委員会

1979年に放送され大ヒットを記録し、“リアルロボットアニメ”という新たなジャンルの誕生のきっかけとなった『機動戦士ガンダム』。その影響を受け、80年代の前半はリアルロボットアニメが席捲する一方、それまでの男児玩具の原作として主力だった巨大ロボットが合体・変形する“スーパーロボットアニメ”の制作が減っていくという現象が起きていた。しかし、ブームは盛り上がる時があれば衰退する時も来る。作り込まれた世界観や設定、荒唐無稽にならない兵器としてのリアル感を重視したリアルロボットアニメも、ジャンル誕生から5年が経過する中で多くの類似作品が制作され、すでに目新しいコンテンツでは無くなりつつあった。
そんな状況を打破すべく、『機動戦士ガンダム』の待望の続編である『機動戦士Zガンダム』の放送が始まるという大きなターニングポイントを迎える同じタイミングで、リアルロボットアニメとスーパーロボットアニメの両方のテイストを持たせた新たな試みを行った作品が登場する。それが『超獣機神ダンクーガ』だ。

アニメーション制作は『宇宙戦士バルディオス』や『戦国魔神ゴーショーグン』、『魔法のプリンセス ミンキーモモ』、『特装騎機兵ドルバック』を手掛けてきた葦プロダクション。シリーズ構成とメインの脚本を務めたのは、リアルロボットアニメ全盛の中でヒットを記録した『六神合体ゴッドマーズ』を手掛けた藤川桂介。アニメーションファン層の年齢が高くなる中で、ハイターゲット向けの作品を生み出してきた制作会社と脚本家が手を組み、リアルロボット的な設定とスーパーロボット的な作劇を交えることで『超獣機神ダンクーガ』は構成されている。
物語の舞台となるのは20世紀末。地球は、異星人軍団ムゲ・ゾルバドス帝国軍の侵略を受ける。それに対抗すべく、地球側では特定の作戦区間を持たない特殊部隊「獣戦機隊」を設立。通常兵器として運用するノーマルモードから獣型のアグレッシブモード、人型のヒューマロイドモードの3つの形態に変形する4機の超兵器「獣戦機」を開発し、士官学校に通う藤原忍、結城沙羅、式部雅人、司馬亮の「野生の力」を持つ4名をパイロットに任命し、地球を守るための戦いが繰り広げられる。

宇宙人に対抗する獣戦機隊は軍事組織的な特殊部隊として設立、主人公が乗り込むメカは兵器的な運用がなされる点などはリアルロボット作品のようになっている。一方、敵対するムゲ・ゾルバドス帝国軍は侵略宇宙人という設定、主人公たちの乗り込む獣戦機も4機のメカがそれぞれ3形態に変形し、さらに4機が合体することで最強形態のダンクーガとなる要素は、往年のスーパーロボット作品の正統進化形ながら、メカデザインの細部には兵器的な要素がデザインや機能に残されており、リアルロボット作品的な風合いも併せ持っていた。こうした、まさにふたつのロボットジャンルの良いところを融合した試みは、ファンから大きく支持されることになる。

また、キャラクタードラマ面においても、中高生を意識したハイターゲット向けな雰囲気が取り入れられている。チームの紅一点である沙羅は士官学校時代の教官のシャピロ・キーツとかつて恋人同士であり、主人公の忍もシャピロの教え子。そして、シャピロは自分がかねてから異星人からの侵略の可能性を訴えていたものの上層部に相手にされず、ムゲ・ゾルバドス帝国軍へと寝返ってしまう。主人公側は、かつて信頼していた教官であり恋人を相手に戦うという葛藤を持ち、さらに個性豊かで若さにあふれる獣戦機隊4人によるチーム内での群像劇もしっかりと描かれることで、物語の厚みが増していった。その結果、キャラクター人気も高まり、主人公も忍の口癖であり、予告編での決め台詞である「やってやるぜ!」は、当時のアニメファンが口にする流行語的なものにもなっていた。

キャラクターデザインを担当したのは芦田豊雄が率いていたアニメ制作会社スタジオ・ライブの若手アニメーターが共作する形で手掛けた「いんどり小屋」というユニット名でクレジットされている。当時、世の中的な流行として、音楽面では第一次バンドブームが盛んであったというタイミングであり、獣戦機隊のメンバーも若者が憧れるもうひとつの文化となっていたロックバンドを意識したようなデザインや衣装で彩られ、ビジュアル面でも新しい要素を取り込んでいた。そして、影響はテレビシリーズの後日談であるOVA『GOD BLESS DANCOUGA』ではバンドとして活動するという形にまで発展していく。
アニメーション作画の面でも後に『美少女戦士セーラームーン』シリーズのアニメーション用キャラクターデザインを担当する只野和子(いんどり小屋のメンバーとして本作のキャラクターデザインにも参加)や本作でデビューし、その後ケレン味あふれるロボット作画の代表格として名を馳せる大張正巳、キャラもメカも描き演出や監督も行うマルチクリエイターの羽原信義などが中心となって活躍することによって、作画面でも注目が集まり、キャラクタードラマ、メカアクションの両面で人気を獲得。アニメーション雑誌にも美麗なキャラクターと迫力あるメカの版権イラストなどが掲載され、作品的には大きく盛り上がった。
本来のメインターゲットは合体ロボットの玩具を手にしてくれる若年層男児としながらも、作劇やキャラクター造形の影響によるハイターゲット層により強く支持され、OVAが3作品作られるなどテレビシリーズの放送終了後も高い人気を誇った。
さらに本作で試みられた“スーパーロボット作品にリアルロボット作品のテイストを組み込む”という試みは、その後にサンライズ(現:バンダイナムコフィルムワークス)によって制作される『勇者王ガオガイガー』に代表される「勇者シリーズ」などにも少なからず影響を与え、スーパーロボット作品の方向性に新たな可能性を加える役割を果たした作品だとも言えるだろう。
放送開始から40周年を迎える中、まだまだ関連の立体物が発売され続けるなど、往年の人気を保ち続ける『超獣機神ダンクーガ』は、80年代も後半に向けてアニメ的潮流が変わろうとする中で、流行の文化とクロスオーバーや新たなクリエイター立ちを輩出する潮流を生み出しなど、ある種の時代の転換点を象徴する作品だったと言えるかもしれない。
文:石井誠
A-on STORE『超獣機神ダンクーガ』特集ページ
https://a-onstore.jp/shop/DANCOUGA/
©DANCOUGA Partner

東京の下町にある墨東署の交通課に勤務する肉体派&大食漢の巡査・辻本夏実、そして彼女と同じく交通課に勤務する頭脳明晰なメカマニアの巡査・小早川美幸。そんなふたりと周囲の人々の活躍を描く、藤島康介原作の『逮捕しちゃうぞ』は、1994年に初アニメ化となるOVAシリーズがスタート。このOVA版の大きな特徴は、夏実と美幸の出会いのエピソードから始まるところだろう。

原作はすでにふたりがタッグを組んでいるところから始まるのだが、OVA版では墨東署に所属が決まり、配属初日にも関わらず遅刻してしまった夏実が、ミニパトに乗った美幸とカーチェイスを繰り広げる場面から開幕。美幸とパートナーを組むことに漠然と反感を抱く夏実と、そんな夏実にクールな視線を向けつつも、好意を抱く美幸。FILE.1には、そんなふたりが木漏れ日が差し込む署の裏手で、ミニパトのルーフを挟んで会話する場面がある。そこに漂う、なんともアンニュイな雰囲気。原作で描かれた夏実と美幸の性格を引き継ぎつつも、どこか等身大の女性としてふたりが描かれているような感覚がある。

そんな夏実と美幸(に加えて、周囲の墨東署の面々)を生き生きと捉えているのが、中嶋敦子が手がけたキャラクターデザインだ。当時、中嶋はすでに『らんま1/2』を筆頭に、キャラクターデザイン・作画監督として活躍していたが、本作でもその手腕を十二分に発揮。いかにもコミック的なデフォルメを押さえながらも、地に足のついたキャラクターとして夏実たちを捉えることに成功している。またFILE.1とFILE.3の作画監督を松竹徳幸が、FILE.2の作画監督を松本憲生がそれぞれ担当し、華やかさとリアリティを両立させた「動き」で物語を盛り立てている。

もうひとつ、スタッフ面で言えばメカデザインとしてクレジットされている村田峻治の存在も忘れてはいけないだろう。夏実の愛車である折りたたみ式の原付、ホンダ・モトコンポの愛らしい車体、夏実と美幸が乗り込むホンダ・トゥデイのミニパト、そして夏実たちの同僚・中嶋剣のZXR750などなど。バイク・車好きとして知られた村田が手がけるデザインは、緻密かつリアリティに溢れていて、ダイナミックなカーアクション(夏実の得意技である「足ブレーキ」のカッコよさ!)とともに強い印象を残す。


先述の通り、夏実と美幸の出会いを描くFILE.1に続いて、FILE.2では台風の直撃を受けた東京での雨のカーチェイスが繰り広げられ、FILE.3では美幸と中嶋の恋の行方が、コミカルに展開。そして最終話となるFILE.4では、女性白バイ隊員に志願した夏実と、彼女を応援しつつもどこか寂しさを拭いきれない美幸の姿が描かれる。正反対だけど――というか正反対であるがゆえに、唯一無二のバディでもある夏実と美幸。そんなふたりの絆の行方を追いかけつつ、このOVA版は幕を閉じることとなった。
そして、1996年にはTVアニメがスタートする。そんなシリーズの好評を受けて1999年に公開されたのが、劇場版アニメ『逮捕しちゃうぞ the MOVIE』だ。こちらはグッとリアリティレベルを上げ、新たな切り口でシリーズの可能性にアプローチした意欲作だ。劇場版は、東京の下町で見つかった不発弾処理の様子から幕を開ける。夏の暑い日差しの中、どこかジリジリとした緊張感をはらみながら描かれる自衛隊員や警察官、関係役所の職員たちの姿。現場周囲の渋滞や住民たちの様子を静かなトーンで写し取っていくその手際は、OVA版とはまた異なったものだ。
物語はこのアヴァン・パートの後、本庁での研修を経て1年ぶりに墨東署に戻ってきた夏実と美幸、そしてそんな彼女たちを笑顔で迎え入れるお馴染みの面々の姿を挟んで、いよいよメインとなる「蜂一号」事件へと進んでいく。駐車場の車から見つかった大量の銃器、そしてハッキングによるものと思われる信号機の一斉故障。実際に起きてもおかしくない、ささやかな事件が少しずつ積み上がっていく中で、映画のスクリーンから不穏な空気が少しずつ沁みだしてくる。

そして、そんなリアリティの演出にひと役買っているのが、登場するロケーションとその描写。墨東署がある(という設定の)墨田区、江東区あたりの地理を丁寧に踏まえて、錦糸町の駅前など、実在の地名を交えながら、細やかにディテールを積み重ねていく。
そしてそんな積み重ねの先に、テロ集団に墨東署が襲撃を受けるという大がかりな展開が待ち受け、さらに海上保安庁の巡視船が勝鬨橋を通過するという驚きのビジュアルへと雪崩れ込んでいく。リアルなディテールを重ねに重ねて、ファンタジックな――ある意味、アニメらしい「ウソ」へと観客を巻き込んでいく手腕は、どこか本作の10年ほど前に公開された『機動警察パトレイバー 劇場版』を連想させたりもする(音楽を川井憲次が担当しているのも、そうした連想を補強してくれる)。また、中嶋敦子が自ら作画監督を務めているだけあって、キャラクターのお芝居も見どころ満載。『逮捕しちゃうぞ』シリーズがこれまで蓄えてきたエッセンスや世界観、キャラクターを踏まえつつ、思いがけない飛躍を見せてくれる、そんな必見の一作だ。
文:宮 昌太朗

ORIGINAL ANIMATION VIDEO SERIES 逮捕しちゃうぞ DVD
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価格:¥8,580(税込)

逮捕しちゃうぞ the MOVIE Blu-ray Disc
BD 好評発売中
価格:¥8,580(税込)

逮捕しちゃうぞ the MOVIE リマスター版
DVD 好評発売中
価格:¥7,480(税込)
▼アニメ『逮捕しちゃうぞ』information Site
https://v-storage.jp/taihoshichauzo/
©1994 藤島康介/講談社・バンダイビジュアル・丸紅
©1999 藤島康介/TBS・バンダイビジュアル・東映ビデオ・スタジオディーン

富野由悠季監督作の『機動戦士ガンダム』が大ヒットを記録し、それに続く形で高橋良輔監督作の『太陽の牙ダグラム』がスタートしたことで本格化した「リアルロボットアニメ」というムーブメントは、作品を描く緻密な世界観設定とより機械としてのリアリティを持ったロボットの設定を深化させていく流れを生んでいた。
そんな中で、富野監督は1982年に放送を開始した『戦闘メカ ザブングル』では、西部劇をモチーフに、砂漠化によって居住環境が悪化した未来の地球を舞台に、作業用重機のような存在であるウォーカーマシンを活躍させた。続く1983年放送の『聖戦士ダンバイン』では、ファンタジー的な世界観である異世界バイストン・ウェル を舞台に、バイストンウェルに生息する巨獣の外殻や筋肉を用いたオーラ・バトラー の姿を描いている。
そして、『戦闘メカ ザブングル』、『聖戦士ダンバイン』に続く形で富野監督が手掛けたリアルロボットアニメが、1984年から放送がスタートした『重戦機エルガイム』だった。 異例とも言える、同じ番組枠内で、同じ監督による3年連続でのリアルロボットアニメの制作という状況は、3年目という流れの中にあったからこその新たな試みがなされ、作品としての強い個性となっていくことになった。
その最大の特徴と言えるのが、当時23歳だった新人デザイナーの永野護の抜擢だった。前2作において、作品の顔である劇中で活躍するメカのデザインは、『戦闘メカ ザブングル』では大河原邦男が、『聖戦士ダンバイン』ではスタジオぬえの宮武一貴という安定感のあるデザイナーがメインを務め、それをサポートする形で当時注目を集めていた若手の出渕裕が加わるという図式だった。また、キャラクターデザインも『伝説巨神イデオン』から引き続く形で、『戦闘メカ ザブングル』、『聖戦士ダンバイン』の両作品では、富野作品の常連とも言える手練れのアニメーターである湖川友謙が手掛けている。メカデザイン、キャラクターデザインは、作品のイメージを決定づけるために重要な存在であり、名前の知れた安定感のあるスタッフが関わることによって、作品は始まる前から一定以上のクオリティを保障されると言える。さらにスポンサー側も有名なデザイナーが手掛けるのであれば、その実績から安心して作品を任せることができるが、ここで実力のわからない新人がデザインを手掛けるとなれば、それは大きな不安へと変わる。そういう意味では、新人デザイナーの永野護がキャラクターデザインとメカデザインの両方を担うとなれば、それは前代未聞の試みだと言えただろう。しかし、『機動戦士ガンダム』をヒットさせ、前2作のリアルロボットアニメを成功へと導いた富野由悠季は、3作目だからこそのチャレンジとして、永野護のクリエイティブ能力に賭ける選択をする。とは言え、いきなり永野護が大抜擢されたわけではなく、企画成立までの特殊な経緯があっての決定だった。

『重戦機エルガイム』の企画は、永野護側が進めていた企画と富野由悠季の企画が合流する形で成立するという流れとなっている。
当時の永野護は『銀河漂流バイファム』のデザインに参加し、その後番組となる作品の企画に携わっていた。メカデザイナーとして採用され、ミリタリーや重機の構造などに詳しい永野護は、新たなロボットのデザインとして、関節や各部の形状が人体に近いように動く構造を持ちデザインとしても破綻しないリアルさを追求するものを考えていた。そのメカが活躍することを踏まえ、ストーリーや世界観設定なども自身で考え、『重戦機エルガイム』の基礎となる企画が生まれる。その企画は、その後『聖戦士ダンバイン』の後番組となる形へと移行し、富野由悠季が監督する作品として引き継がれることになる。

永野護が手掛けていた企画に、富野由悠季はかつて自身が考えていた別企画の内容を加えることで、より完成度の高い作品として仕上げていった。その企画とは、富野由悠季が『機動戦士ガンダム』を手掛けていた1979年12月に書いた『ムゲン・スター』と名付けられたものだった。2019年から2021年にかけて開催された巡回展『富野由悠季の世界』にて展示された、『ムゲン・スター』のイメージボードには、二重太陽サンズを中心とした5つの星系の風景、ライバルとなるギャブレット・ギャブレー、ヒロインのファンネリア・アム、運命の女性であるクワサン・オリビーなどの姿も描かれており、『重戦機エルガイム』の設定や世界観が大きく重なる部分も多かった。
『重戦機エルガイム』の企画は、若い永野護による新たな感性と、富野由悠季の『機動戦士ガンダム』の次なるステップを模索しながらも成就しなかった企画が合致することで生まれることになったのだ。
さらに驚くべきは、メカデザインだけでなく、キャラクターデザインも永野護に任されたことだ。永野護が描く緻密なメカにマッチするキャラクターデザインができる人間を選定できない状況において、永野護自身がキャラクターも描くことができるということを富野由悠季が知り、そのデザイン画を見て採用に踏み切る。永野護は、ロックバンドのステージ衣装などにも精通し、ファッションデザインも学んでいたことから、そのセンスを見出されることとなったのだ。その結果、『重戦機エルガイム』という作品に関わることで、永野護は企画、メカデザイン、キャラクターデザインを手掛けることができるマルチクリエイターとして認知され、アニメ業界に現れた新たな才能の持ち主として注目を浴びることになる。


実際のところ、メカデザインとキャラクターデザインの両方を新人デザイナーに任せることに対しては、会社的に反対意見もあったという。事実、作品のメインデザインを担当したことがない新人デザイナーが、キャラクターデザインとメカデザインという番組の顔を担うというのは、まさに前代未聞の事件だった。しかし、この無謀とも言える決断は、新たなスタークリエイターの誕生と共に作品の価値を大きく高める結果となった。
一方、アニメーション本編においても、湖川友謙が率いる作画スタジオ・ビーボォーに所属する北爪宏幸や大森英敏、恩田尚之などの永野護と同世代の若手アニメーターが作画面でのメインスタッフとして起用され、作画監督を務めつつ、永野護の描く設定をアニメ作画用にクリンナップし、生き生きとしたキャラクターとして作画が行われることで、映像的にも新たな可能性が見出されることとなった。さらに彼らはアニメ誌の版権イラストなどを通じて、アニメ業界の新たな才能として注目されるようになっていく。
永野護をはじめとした若いスタッフたちは、『機動戦士ガンダム』の影響を受けてアニメ業界に入った世代である。新たな世代のデザイナーやアニメーターの台頭に関しては、1982年に放送された『超時空要塞マクロス』が有名だが、それと対になるように巨匠・富野由悠季や湖川友謙に影響を受けた世代のクリエイターたちが、彼らのもとで自分たちの影響の受けた作品を進化させるように取り組んだのが『重戦機エルガイム』という作品なのだ。
時代は、OVA(オリジナルビデオアニメ)が、新たなアニメーションの表現媒体となっていく中で、『重戦機エルガイム』で活躍したアニメーターたちがそこでのメインストリームとなっていったことからもその存在意義は大きい。また、メカニックとしての設定の緻密さや考え方という点においても、『重戦機エルガイム』で描かれたヘビーメタルは、リアルロボットのひとつの到達点になり、その後のメカデザインの在り方に大きな影響を与えることになった。そういった意味では、『重戦機エルガイム』は、進化し続け、さまざまな表現方法を模索したリアルロボットアニメのターニングポイントとなった作品だと言えるだろう。
文:石井誠
『重戦機エルガイム』 40周年記念公式サイト
https://l-gaim.net/
©創通・サンライズ

TVシリーズ『超時空要塞マクロス』(1982年放送)の劇場版作品として、1984年7月21日に公開された『超時空要塞マクロス 愛・おぼえていますか』(以降「愛・おぼえていますか」)は、「メカと美少女」という一大ムーブメントを巻き起こし、ハイクオリティアニメ作品の発端とも言われ、のちのアニメーションシーンに多大な影響を及ぼした。


『超時空要塞マクロス』は「話数ごとのクオリティの落差」が目立ったものの、三角関係、歌、可変戦闘機というアイデアはアニメファンから高い人気を獲得。当時発売された主役メカ、VF-1 バルキリーの玩具も爆発的にヒットし、TVシリーズの3クールへの延長と、映画化決定を後押しした。
そこで幸運だったのは、「愛・おぼえていますか」が完全新作劇場作品として送り出されたことにある。「愛・おぼえていますか」が公開される数年前、アニメ映画といえば『機動戦士ガンダム』ですら総集編映画という時代だった。が、決定的に状況が変わったのは、1983年に相次いでオリジナルアニメ映画が公開され、明確に世の中のアニメ映画への取り組みが変わったタイミングだったのが功を奏した。もし「愛・おぼえていますか」が完全新作映画でなかったら、その後のアニメの歴史は変わっていたかもしれない。
劇場版の制作に当たり、メインストーリーの「文化を知らない異星人との星間戦争」という基本はそのままに、TVシリーズ第27話「愛は流れる」までのストーリーを再構成。「歌で戦争を終わらせる」ことを結末にする物語へとまとめ上げられた。

一条輝、リン・ミンメイ、早瀬未沙というメインキャラクター3人の関係は改められ、輝はプロフェッショナルの軍人、ミンメイはすでにアイドル、未沙と輝は冒頭で初めて知り合う……といった変更が加えられた。また、敵異星人は男性のゼントラーディと女性のメルトランディのわかりやすい対立という構図へと改められている。
プロットを手掛けたのは、本作で初の映画監督(共同)を務めることになった弱冠23歳の河森正治。TVシリーズでは、メカデザインのほかに設定監修(黒河影次名義)という不思議なポジションとしてクレジットされていたが、もともと企画の中心としてまとめてあげていた河森だけに、「マクロス」を再構築するという意味では最適な人物といえた。


劇場版の構成に取り組むにあたり、河森は徹底的に映画の構造を学んだという。そこで導き出したのは、自分の本職であるデザイナーとしてのアプローチだった。「シナリオもデザイン的なロジカルで構成されている」という結論に達したとき、様々な贅肉はそぎ落とされ、「歌で戦争を終結させる」ことに特化した映画へと昇華した。
一方、驚くべきはビジュアル面がすべてに渡って刷新されていることにある。劇場版の大スクリーンに対応する結果だったとしても、バルキリーやマクロスのリデザインだけではなく、美術やプロップまで新規に起こされている。

TVシリーズの「マクロス」では、たとえば艦内の街並みは、どこか70~80年代の既存のアニメ作品を想起させる。そもそもTVシリーズは、スケジュールや制作体制の関係から、ハイクオリティな設定は再現できないために、致し方ない部分ではある。だが、それを良しとしないスタッフがいた。「プロダクションデザイン」としてクレジットされた宮武一貴である。プロダクションデザインとは、1カテゴリのジャンルにとらわれず、すべてのデザインを統括するポジションということを指す。
宮武は、河森のイメージボードを元に、劇場版で膨大な新規デザインを描き切り、「マクロス」という作品を構成するほぼすべてのものを、統一した世界として再生した。そこには部分的に妥協せざるを得なかったTVシリーズへのリベンジがあり、「スタジオぬえの本気とはこういうものだ」という、圧すら感じさせる仕上がりとなっている。その設定画は現在の目で見ても、息をのむほどの完成度であり、アニメーション設定のレベルを数段上げている。
無論、過度なディテールはスタッフの疲弊を招くだけだが、河森は「動画のいらない艦船や構造物は、いくらハイディテールを加えても辛くはない」「むしろ画面がリッチに見える」ということを、TVシリーズで学んでいた。あのハイディテール、ハイクオリティアニメの象徴のような「愛・おぼえていますか」で、「ここは手を抜くことができる」という周到な計算があったことには驚かされる。
こうした点を踏まえると、TVシリーズという(言葉は悪いが)プロトタイプが存在したことは重要だった。多くのスタッフの中で、「マクロスとはなにか?」というイメージを醸成する期間が設けられたのは大きな意義があったといえる。
たとえば本作にはTVシリーズに参加したスタッフのみならず、「劇場版の「マクロス」に関わりたい」という新規の作画マンが参加。彼らは『マクロス』のメカアクションとはなんたるか」を理解しており、結果としてメカ作画監督の板野一郎は作監作業に集中することが可能となり、TVシリーズでは描けなかった「パイロットごとのアクションの描き分け」という描写を実現したという。
『超時空要塞マクロス』の企画時に描いた「新しいアニメを送り出す」という挑戦とは裏腹に、TVシリーズの完成度はスタッフにとって「忸怩たる思い」があった。胸に秘めていたのは「このままでは終われない」という思い。TVシリーズの素材はほぼ流用せず、すべてが刷新されたのは、そうした思いの表れといえる。
「愛・おぼえていますか」で描かれたのは、スタッフが思い描いた「マクロス」であり、ファンが見たかった本当の「マクロス」。その強烈なまでの情念が、「愛・おぼえていますか」という不変的な映画を作り上げたのである。
文:河合宏之

超時空要塞マクロス 愛・おぼえていますか
4Kリマスターセット(4K ULTRA HD Blu-ray & Blu-ray Disc)(初回限定版)
【A-on STORE、プレミアムバンダイ、超時空ファンクラブ マクロス魂限定】
2025年1月29日発売
価格:¥14,300(税込)
超時空要塞マクロス 愛・おぼえていますか
4Kリマスターセット(4K ULTRA HD Blu-ray & Blu-ray Disc)(特装限定版)
2025年1月29日発売
価格:¥9,900(税込)
▼MACROSS PORTAL 公式サイト
https://macross.jp/
▼「マクロス」公式X
@macrossD
©1984 BIGWEST

産業革命期とデジタル革命期の対照で浮かぶ、原点回帰と冒険心
ゴージャスでリッチな長編アニメーション映画を観て、たっぷりと豊かな気分になりたい。大友克洋が『AKIRA』(88)に続いて監督した『スチームボーイ』(04)は、そんな要求に応えてくれる超大作である。2004年7月17日に東宝系で全国公開され、今年が20周年にあたる同作は、製作期間9年、総製作費24億円とされ、総作画枚数は18万枚と日本アニメ史上でも屈指の超大作に位置づけられる。

内容はオーソドックスな少年の冒険活劇仕立てであり、奇抜な発明品としての入念に描きこんだメカが次々と登場し、ギヤやクランクなど隅々まで描き込んだメカニズムを露出したまま細やかに動き、なおかつ破壊と戦闘に満ちたアクションを展開する。しかもそのメカは金属感むき出しであり、圧巻の興奮をまねく動作原理は産業革命期の蒸気機関だ。未来社会と超能力に向けられた『AKIRA』とは正反対の方向性にあって、この作品における「大友克洋の作家性」は、その点に集約されている。それはなぜなのか。答えは時代設定にある。
映画中盤以後、メインとなる舞台は世界初の万国博覧会であり、クリスタルパレスのビジュアルで知られる1851年の第1回ロンドン万博が選ばれている。蒸気機関による産業革命で、繁栄の一途をたどる様を世界に知らしめた、大英帝国の象徴的なイベントだ。
万博本来の目的は、科学技術の応用が大衆の生活の利便性向上をもたらし、農業や工業における産業が高みに至る試みを周知するもののはずだ。しかし科学の放った大きなパワーは野心家たちを魅了し、人類史を後戻りできない領域へと導き始めた。そのひとつの結果が、次の20世紀に科学を応用することで高度化した「戦争」なのだ。為政者たちが二次にわたる世界大戦と大量殺戮を引きおこした原点は、科学の可能性で野心を触発したロンドン万博にあるということだ。

映画のクライマックス、人類史の分岐点でもある万博会場近傍に設置された巨大なスチーム城からは、蒸気機関を使った兵器類が次々に登場し、戦闘による大混乱を巻き起こす。アメリカのオハラ財団と結びつき、兵器を売ることで資金を得て科学を進ませようとする発明家ジェームス・エドワード・スチムの目論みが、物語をドライブする。
主人公は、その息子で少年発明家のジェームス・レイ・スチムである。レイは、科学は幸福のためにあると信じている祖父ロイドと、父エドワードとの確執に巻きこまれ、どちらに理があるのか悩み、葛藤する。それを解決するのも科学の力だ。

発明一家に生まれたレイ自身も、その才能に恵まれていた。そして大混乱の中で飛行機械を発明し、ヒロインのスカーレット・オハラを救おうと奮戦する。その姿を、祖父は「スチームボーイ」と呼んだ。こうしたヒロイズムと冒険心がこの映画の中心にある。自立心が強く行動的なスカーレットは、レイのことを終始気にかけ、ボーイ・ミーツ・ガールの要素もある。多面的に娯楽性を追求した点でも、アニメ映画史的に希有な作品なのだ。

では、なぜ戦闘アクションが未来志向ではなく、蒸気機関の時代に回帰することになったのであろうか。謎を解く鍵は「デジタル映像時代の幕開け」にある。
本作が開発をスタートした90年代中盤、日本の商業アニメ制作は大きくデジタルに傾き始め、次のステージに向かおうとする時期であった。それまでのフィルムとカメラを使った撮影台には物理的な制約が多々あって、実写のように自在なカメラワークが至難であった。そのカベを乗りこえる試みのひとつが、95年に大友克洋が製作総指揮・総監督として参加した劇場オムニバスアニメーション『MEMORIES』のEPISODE 3「大砲の街」(大友克洋自ら監督・原作・脚本・キャラ原案・美術を担当)であった。アニメ作品は本来数秒単位でカットを刻むものだが、約20分間をワンシーンワンカットで連続した映像で描いていた(技術設計は片渕須直)。
その世界観は、電子技術の存在しないレトロフューチャー、スチームパンク系であった。発展形にあたる『スチームボーイ』では、鋼鉄のメカニズムが作動する重さと固さ、スムーズな移動感に、3DCGのパワーが駆使された。蒸気兵、飛行兵、水中兵など陸・空・水に強化外骨格系の兵士が投入され、蒸気戦車や飛行船が活躍して立体的な戦闘が描かれていく。そしてスチーム城そのものも巨大なメカ兵器であり、要塞のような巨体がロンドン市街を危地に追いこむビジュアルのスケール感には圧倒される。
特に室内では木村真二美術監督が描く質感のこもった背景とCGメカが調和し、メカ・エフェクト作画監督の橋本敬史が、蒸気の噴出と拡散を丁寧に作画で描きぬいている。空中に消える部分を作画でとらえるという映像もまた、アナログ撮影では至難なデジタル表現なのだ。一般にエフェクト作画は爆発やビームの激しく赤系統に染められた光を描くが、本作のみどころは細密に描かれたレバーやメーターまみれの背景の中、白い蒸気が細やかにたなびいて消えていく風情にこそある。断熱圧縮によって吹き出た蒸気が低温化し、氷結していく表現も、他作では見られない趣向であろう。

そして本作の大きな特徴は、米国ハリウッドにおける音響作業である。百瀬慶一音響監督の采配で、音楽はハンス・ジマーの門下生スティーブ・ジャブロンスキー(後に『トランスフォーマー』などを担当)が20世紀フォックススタジオでフルオーケストラ録音、さらに大作映画を数多く手がけたベテランたちが、緻密な映像に対して数百チャンネルに及ぶ分厚い音をつけ、作品のゴージャス感をさらに向上させた。4Kモニタ、5.1ch以上のホームシアター環境があれば、20年前にここまで作りこんでいたのかと、成果が存分に味わえるはずである。
ひたすら破壊に次ぐ破壊が続く中、野心をむき出しにした男たちのダークサイドと、希望を信じる少年の賢明な行動のコントラスト。それは新しい時代の節目にあたって、何を考え、どう行動するか迷う現代人にも、光をあたえてくれるのではないだろうか。産業革命の時代とデジタル革命の時代、それを重ね合わせた意図をスーパーリッチな映像の奔流から、ぜひ読みとっていただきたい。
文:氷川竜介(アニメ特撮研究家)
▼スチームボーイ 作品紹介ページ
https://www.sunrise-inc.co.jp/work/detail.php?cid=159
©2004大友克洋・マッシュルーム/STEAMBOY製作

今年で30周年を迎えるファンタジー系ロボットアニメ『覇王大系リューナイト』(1994)。「月刊Vジャンプ」のコミック連載からスタートしたメディアミックス作品で、コミックに続いてTVアニメとOVAが並行して展開した。アニメーション制作はサンライズ(現:バンダイナムコフィルムワークス)。原作とキャラクター原案は『宇宙英雄物語』や『星方武侠アウトロースター』などで活躍した伊東岳彦で、「Vジャンプ」連載のコミック版の作画も担当。TVシリーズの監督は『絶対無敵ライジンオー』より始まるエルドランシリーズ3作を手がけた川瀬敏文。シリーズ構成には『機動戦士ガンダム』など幾多のサンライズ作品に携わったベテラン星山博之が携わる。一方のOVAシリーズの監督は『鎧伝サムライトルーパー』の池田成、シリーズ構成は池田氏と共に『新機動戦記ガンダムW』を手がけた隅沢克之が担当した。TV版は1994年4月~1995年3月放送(全52話)、OVAは1994年7月~1996年5月(全17巻)発売。コミック、TV、OVAいずれも巨大な剣が刺さった世界「アースティア」を舞台に、アデューたち4人が「リュー」と呼ばれるロボットに乗り活躍する物語が展開。世界観や設定には1980年代後半より流行ったロールプレイングゲームの要素をふんだんに盛り込み、ファンタジー的な世界観や主人公たちのリューがクラスチェンジするという見せ場が用意された。これらの基本設定はキャスティングも含め全シリーズ共通だが、キャラクターの性格や敵の設定などは作品毎に意図的に変えており、挑戦的なメディアミックス展開が行われていた。主人公アデュー役は結城比呂、ヒロインのパッフィー役は矢島晶子が担当。イズミ役は小杉十郎太、サルトビ役は西村智博が登板し、他に折笠愛、永島由子、松本保典、置鮎龍太郎など人気声優が参加している。



『覇王大系リューナイト』(TVシリーズ)あらすじ
巨大な剣がそそり立つ大地アースティア。妖精や怪物など様々な種族が暮らすこの世界に、真の騎士を目指す少年アデューがいた。リューと呼ばれる意志を持ったロボット、ゼファーとともに修行の旅を続けていたアデューは、魔法使いのお姫様パッフィーや従者イズミ、忍者のサルトビたちと出会い、旅をともにする。旅の途中、新たな仲間たちやライバルとなる暗黒の騎士ガルデンと出会ったアデューは、アースティアの支配を目論む邪竜族の野望を知り、それを阻止しようと戦いを挑む。
「騎士道大原則ひとつ!」
巨大な剣アースブレードが中央にそびえ立ち、人々が妖精や怪物と共に暮らす世界アースティア。そこに「音速の騎士」を自称するアデュー・ウォルサムという少年がいた。アデューは真の騎士になるべく突き刺さったアースブレードを目指して冒険の旅に出る。そして彼は王女にして魔法使いのパッフィー、その従者イズミ、忍者のサルトビと出会い、彼らと共に旅を続けることになる。彼らはリューと呼ばれる太古のロボットを召喚することができ、旅の途中でリューに乗り込んでは悪党たちと戦い続けた。やがて一行はサルトビの両親を殺し、故郷を壊滅させた暗黒の騎士ガルデンと遭遇。ダークナイト・シュテルを使うガルデンとの戦いを通じ、アデューたちはアースティア支配を目論む真の敵・邪竜族の存在を知る。さらなる仲間のグラチェスや月心、カッツェ兄妹と共に、邪竜族に戦いを挑むのだった。
『覇王大系リューナイト』 作品情報ページ
https://sunrise-world.net/titles/pickup_123.php
©伊東岳彦/集英社・サンライズ

サンライズといえば『機動戦士ガンダム』シリーズを筆頭に、メカやアクションが得意なアニメスタジオ……というイメージが、まだまだ強かった2004年。「サンライズ初の萌えアニメ」というキャッチフレーズとともに、1本の作品が世に送り出される。タイトルは『舞-HiME』(マイヒメ)。2004年9月に放映が始まったテレビシリーズに加えて、コミックやゲーム、ラジオ番組など、さまざまなメディアで展開した、いわゆるメディアミックス作品だ。
とはいえ「サンライズ初の萌えアニメ」というのは、あくまでも宣伝用に考えられたキャッチフレーズだったようだ。
当時プロデューサーを務めた古里尚丈は、あるインタビューで、本作を「とにかく女の子がたくさん出てくる」「オリジナルの深夜帯アニメ」として企画・立案したと語る(※1)。そして、そんな「女の子がたくさん出てくるアニメ」を成立させるために、ぜひとも必要だったのがキャラクターデザインを担当した久行宏和の存在。久行は、古里がプロデュースした『新世紀GPXサイバーフォーミュラ SAGA』『SIN』のOVA2作でもキャラクターデザインを務めているが(原案はいのまたむつみ)、そんな久行が描く女の子たちを「アイドル化して売り出す」のが『舞-HiME』の狙いのひとつだったという。

事実、『舞-HiME』の物語を彩る女性キャラクターは「バラエティ豊か」という言葉では収まりきらないほど、強烈な個性の持ち主ばかりだ。ノースリーブの学生服に身を包み、溌剌と動き回る鴇羽舞衣を筆頭に、ライダースーツをまとい、クールな雰囲気を醸し出す玖我なつき、あやうく海で溺れかけていたところを舞衣に助けられ、まるで飼い主に対するペットのごとく舞衣に懐く野生児・美袋命、いついかなるときも冷静沈着な生徒会長……のように見えながら、実はその胸の奥で誰よりも強い情念の炎を燃やす藤乃静留、夜の街に繰り出しては言い寄ってきた男たちから金を巻き上げる不良少女・結城奈緒、おちゃらけた言動とは裏腹に、誰よりも強い信念で生徒たちを導いていく非常勤講師・杉浦碧などなど。いかにもマンガ的なデフォルメ表現(例えば、激辛カレーパンを食べた後、暴走する命など)を導入しつつ、水着回があったかと思えば、コスプレ姿でカラオケに興じるエピソードもあり、はたまた浴衣姿でお祭りに出かける回もありと、いかにも「萌えアニメ」的なサービスが、これでもかとばかりに詰め込まれている。


そして本作の面白いところは、そんな萌えアニメ的な「お約束」を随所に盛り込みつつも、作品の主眼が少女たちによる「熱血バトル」にあるところだ。
物語は、主人公の舞衣が弟の拓海とともに、緑に囲まれた巨大学園・風華学園にやって来る場面から幕を開ける。学園に向かうフェリーに乗船中、ライダースーツ姿の侵入者に襲われる舞衣たち。そこで彼女は、HiME(Highly-advanced Materializing Equipment=高次物質化能力)の力に目覚め、不本意ながらも、風舞学園周辺に出没するオーファン退治に協力することになる。

しかも物語が進むにつれて、HiMEの力を持つ者が、舞衣以外にも複数人いることが明らかになり、さらには「一番地」と呼ばれる謎の組織や、HiMEの力を自分たちのものにしようと企む外部勢力の存在が見え始める。物語の全体像がなかなか見えない中で、ときに衝突し、ときに交流を深めていく女性キャラクターたち。クラスメイトとなる楯祐一(演じている関智一の演技がまた素晴らしい)と舞衣の、いかにもラブコメ的なやり取りもおかしいし、拓海とルームメイトになる尾久崎晶の正体が明らかになるまでの、お約束を守りつつ予想の斜め上を行く展開もまた楽しい。

そして、物語の大枠がひとまず明らかになった第17話。ここで、ストーリーの目指す方向が大きな転換点を迎えることになる。「HiMEと呼ばれる少女たちが、オーファンなる怪物と戦う、伝奇風味の学園バトルアクション」から「少女たちが、お互いの激しい情念をぶつけあうバトルロイヤル」へ。HiMEの力を手に入れる代わりに、舞衣たちは自分の一番大切なものを賭けなければならないのだが(この設定を考えたのは久行だったという)、つまり「大切なものを守り抜く」ために、好むと好まらざるとに関わらず、戦いに身を投じる――そのあまりに不条理な状況で、最後まで生き残るのは誰なのか。これまで各所に散りばめられてきたドラマの種子が一気に芽吹いたかと思えば、思いがけない細部と細部がつながり、300年に一度行われるという「祭」に向けて、ドラマチックな一大絵巻を描き始める。

先述のインタビューで、古里プロデューサーは『舞-HiME』の根底にあるのは「少女漫画の持つドラマチックさ」だと明かしているが、まさにしかり。思いと思い、情念と情念がときにぶつかり、ときに絡み合う少女たちのドラマが、サンライズらしいケレンの効いたバトル演出と響き合う。観れば決して忘れられない一作になること、間違いない。
文:宮 昌太朗
(※1)週刊少年チャンピオン編集部・編『舞-HiME アニメブック2学期』、秋田書店、2005年
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©SUNRISE

「2作品の『マクロス』を同時に作る」という空前絶後のアイデア
1982年にTVシリーズが放送され、1984年には劇場映画化も実現した『超時空要塞マクロス』は、絶大な人気を誇った作品だったが、当時のメインスタッフが再び続編制作に携わることはなかった。
「マクロス」の企画を作り上げた中心的人物である河森正治は、基本的に「二度と同じことはやらない」ことを信条としており、もう「マクロス」を作るつもりはなかった。だが、それは裏を返せば「何か新しいことができるなら取り組む」ということに他ならない。そして河森は思い付いてしまったのだ。「2作品の『マクロス』を同時に作る」という空前絶後のアイデアを──。
ひとつはTVというメディアで、「マクロス」とは真逆な漫画チックな方向性を打ち出した『マクロス7』。そしてもうひとつが、OVAという形態を活かした『マクロス』のリアル路線を継承するハイクオリティな『マクロスプラス』。相反する2つの方向性の「マクロス」を実現できるならば、もう一度過去の作品に関わる意味が見出せるのではないか…? かくして不可能と思われた河森の企画は承認され、『超時空要塞マクロス 愛・おぼえていますか』(以降「愛・おぼえていますか」)公開から10年が経過した1994年に、2作品が同時に送り出されることになった。

『マクロス7』は監督のアミノテツロー(現:アミノテツロ)をはじめ、王道のTVアニメを手掛けてきたメンバーで構成されたことに対し、『マクロスプラス』のスタッフィングは、初監督と初アニメ脚本という意外なものだった。
監督に起用されたのは、『機動戦士ガンダム0083 STARDUST MEMORY』の現場で、河森が注目していた演出家、渡辺信一郎。渡辺は本作が初監督となったが、河森自身も23歳で初監督に抜擢された経緯から、「別に不思議なことではない」と考えていた。
一方、脚本は実写ドラマで実績のある信本敬子に依頼された。OVAという形態は、話数を広げられない反面、30分という枠組みにとらわれず、人数を絞ればキャラクターの側面を深堀りできるというメリットがある。TVシリーズよりも、実写ドラマの経験が活かせるフィールドと言えた。
アニメへの参加が「初」という点では、菅野よう子が本格的にアニメーション音楽を手掛けたのも本作である。渡辺、信本、菅野の3人は、その後『カウボーイビバップ』という名作に携わることになるのだから、このスタッフィングには先見の明があったと言わざるをえない。
本作の舞台として描かれるのは、『超時空要塞マクロス』からおよそ30年後となるA.D.2040。惑星エデンで行われる次期全領域可変戦闘機開発計画「スーパーノヴァ計画」を題材に、YF-19パイロットのイサム・ダイソンと、その学生時代の親友であったガルド・ゴア・ボーマンの対立、そしてヴァーチャル・シンガー、シャロン・アップルのプロデューサーで、2人の幼馴染みの女性、ミュン・ファン・ローンを交えた三角関係が軸になる。



試作機開発競争という題材は、そもそも「大規模戦闘を描かずにメカアクションを集中して描ける」という点を考慮したうえでの河森の狙いだった。その狙いは適格で、破天荒なイサムが駆るYF-19と、冷静さの中にゼントラーディの熱さを持つガルドのYF-21は、魅力的なキャラクター性を生み、長きに渡ってファンに支持されることになる。
一方、20代前半の若者だった河森も30代のベテランとなり、作家としてテクノロジーやサイエンスへの憧れを描くだけでは済まないことを理解していた。特に集団催眠というテーマは、河森自身が注目していたトピックで、「現代人は知らないうちに集団催眠という洗脳を受けている」という危険性を作品のテーマとして取り入れられている。シャロン・アップルによる洗脳、AIへの警鐘は、逆に現代だからこそ実感できる要素と言えるかもしれない。

そして忘れてはならないのが、現在では実現不可能と言われる手描きによるハイクオリティメカアクションである。本作で実質的にバルキリー対バルキリーの本格戦闘シーンが描かれたわけだが、超絶的な空戦アクションである「板野サーカス」を存分に味わえるだけではなく、バトロイド同士の格闘戦も大きな見どころとなった。
このメカアクションを実現させたのは、『超時空要塞マクロス』からシリーズを支えてきた特技監督の板野一郎。アニメのハイクオリティ化が進むなかで、板野は「これが最後の有人飛行(最後の手描き作画)」ととらえていた。板野はメカアクションのリアリティ向上を狙い、アメリカ取材で河森とともに模擬空中戦を体験。劇中のメカアクションやコクピット描写など、取材で得られた経験は、本作の様々なアクションにフィードバックされている。


そんな板野を慕い、村木靖ら「マクロス」のメカアクションイズムを受け継いだ作画マンが参加。『マクロスプラス』のスタッフクレジットは、オールジャパンアニメーターと言っても過言ではない布陣である。
特に『マクロスプラス MOVIE EDITION』で追加されたリミッター解除されたYF-21と、ゴーストとの戦闘シーンは、無数のミサイルを回避する超絶的な作画を描き切り、「伝説の5秒」と称される名場面となった。『マクロスプラス』を象徴するシーンとして、現在も語り草となっている。

かつてハイクオリティアニメの代名詞だった『超時空要塞マクロス 愛・おぼえていますか』は、その後生み出された多くの作品に影響を与えた。それから10年、再び時代に楔を打った『マクロスプラス』は1990年代を代表する作品となっただけではなく、「マクロス」のシリーズ化を決定付けることになる。「マクロス」シリーズとして紡がれたハイクオリティアニメを作り出す志は、その後表現方法が変わったとしても、絶えることなく受け継がれているのである。
文:河合宏之
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この世に災いをもたらすという「クロウカード」を回収すべく「カードキャプター」として奮闘する、さくらこと木之本桜の活躍を描く、CLAMP原作漫画『カードキャプターさくら』劇場作品第1弾『劇場版 カードキャプターさくら』(1999年8月公開)。
劇場公開25周年を記念して、2024年8月9日(金)より『劇場版 カードキャプターさくら』と『CLOVER』の再上映も決定している。
見どころはセル画で描かれた舞台・香港の景色、
そして豪華なゲストキャラクター
近所の商店街の福引で特賞の香港旅行を当てたさくらは、冬休みを利用して兄の桃矢、親友の知世、憧れの雪兎、“封印の獣”ケルベロスことケロと一緒に初めての海外旅行へ出かける。大はしゃぎのさくらだったが、香港で彼女を待っていたのは夢で見た女魔導士。同級生・李小狼の故郷、香港を舞台にさくらと不思議な女魔導士との戦いの行方は……。
本作の見どころは舞台となる香港の景色、劇場版ならではのゲストキャラクターの豪華さ、そしてシリーズを追っている人にとってはさくらの恋心や名前の呼び方など、変化する先を知っているからこそ“キュン”とするポイントも盛り込まれている。さくらのかわいらしい姿や、見ごたえたっぷりのアクションも堪能できる。その中でもちょっぴり切ないエッセンスが加えられているのもポイントだ。

セル画で描かれた美しい香港。現地で遭遇するさくらの同級生で小狼の従妹・苺鈴のガイドっぷりも見事で、作品を観ている途中から「聖地巡礼したい!」という気持ちが湧き上がってくる。セントラルプラザやスターフェリー、ピークトラムなどの観光スポットや、ラダーストリートなどのショッピングスポット、飲茶レストランに美しい夜景が堪能できるビクトリアピークなど、押さえておきたいスポットが続々登場。看板や道路標識、ビル、ビニール屋根のお店など、香港のリアルが感じられて(行ったことがある人なら特にそう思うはず!)、リサーチの気合いも伝わってくる。ネオン輝く空を飛びまわるさくらの姿に“めっちゃ贅沢な観光!”と思う人も多いかも。さくらのバトルコスチュームにも当時の香港テイストが入っていて、現地の人以外の香港ファッション(中華風?)も楽しめる。

ゲストキャラクターも超豪華。まずはさくらの夢の中に現れた女魔導士。本名は明かされていない。クロウカードを作り出した稀代の魔術師クロウ・リードとの間になにやら因縁がある模様。彼女の声を担当したのは林原めぐみ。敵キャラという立ち位置ながら、クロウへの美しくて切なくて、そして強すぎる想いには、さくらでなくても寄り添ってしまうかも。夢に出てきた鳥を街中で発見し、追いかけた先で里帰りをしていた小狼と再会したさくらは、彼の実家に招かれる。そこで出会ったのが小狼の母親・李夜蘭。クロウ・リードの母方の血縁であり、自身も強い魔力を持つ彼女は、初対面にも関わらず、さくらがクロウカードを所持していることを一瞬で見抜いてしまう。演じるのは井上喜久子。小狼からは「母上」と呼ばれており、威厳のある母親という印象だが、さくらに助言をするなど優しい一面を見せる。映画ではさくらの頬に口づけをするシーンも登場。その瞬間のさくらの表情はもちろん、小狼、知世の反応、少し離れた場所に見える桃矢と雪兎にくっついて離れない小狼のテンション高めな4人の姉、芙蝶(CV:山口由里子)、雪花(CV:芝原チヤコ)、黄蓮(CV:涌澤利香)、緋梅(CV:菅原祥子)も要チェックだ。小狼の綺麗なお姉さんに「かっこいい!」と飛びつかれ、ベッタリと寄り添われても平然としている桃矢と雪兎の姿は小さいけれど、なんともじわるワンシーン。このおかしさのバランスに『カードキャプターさくら』らしさを感じるはず!


ラストでちょっと大人になったさくらが感じられる本作。敵キャラにも寄り添う優しさを持つさくらの“想い”が滲むシーンも注目ポイント。劇場公開時に話題になった「大好きな人がいなくなるのはつらいよね」のセリフは胸を打つ。このセリフ以降、エンディング(主題歌「遠いこの街で」の歌詞もしっかり噛み締めたい)まではさくらの成長や小さな決意を感じグッとくる。知世の優しさも見られる素敵な終わり方になっていて、映画ならではの余韻を堪能できる。知世の優しいセリフも心に沁みる。さくらが雪兎に恋している時期なので、船のシーンで雪兎を見つめる表情には切なさを感じ、桜の花の形の髪飾りを買ってもらうシーンとのギャップも楽しみたい。この時点では、さくらと小狼はお互いを下の名前で呼んでおらず苗字で呼んでいて、シリーズを追っている人には懐かしさを感じるポイントかも。また、「矢」のカードの捕獲シーンや、小狼が所持する「嵐」のカードを使用する場面など劇場版で初お目見えとなるシーンは必見だ。

カードキャプターとしての運命と向き合い、恋のときめきや揺らぎの中で成長していくさくらの姿を、美しい香港の景色と共に、8月9日より開始する劇場上映で見届けてみてはいかがだろうか。
文:タナカシノブ

劇場版 カードキャプターさくら
Blu-ray 好評発売中
価格:¥6,600(税込)

EMOTION the Best 劇場版 カードキャプターさくら
DVD 好評発売中
価格:¥2,090(税込)

▼カードキャプターさくら 公式サイト
https://ccsakura-official.com/
▼カードキャプターさくら 公式X
@ccsakura_info
©CLAMP・ST・講談社/バンダイビジュアル・マッドハウス












