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2022/06/27
『プラネテス』(後編)[特集サイト「プレイバックエモーション]【イマレコ!-今コレをレコメンド!】

NHK Eテレにて毎週日曜 午後7時00分より放送中のTVアニメ『プラネテス』をイマレコ<-今コレをレコメンド!->!
漫画『プラネテス』をTVアニメ化するにあたって、より作品の魅力を増幅させるに至った新設定を前編・後編で紹介!

「デブリ課の新人タナベ・アイ」というキャラクター設定

漫画『プラネテス』をアニメ化するにあたって、大きく設定が変えられたもうひとつのポイントが、デブリ課の新人タナベ・アイの人物造形だ。
原作のタナベは、ちょっと神秘的な雰囲気を持った人物として登場する。やがて彼女は、捨て子である歳まで一切言葉を持たなかったということが明かされる。愛がすべてを救うという信念を持っているが、それは彼女が社会からすこしはみ出したところに生きているからだ。
一方、アニメのタナベは、ごく普通の人間だ。デブリ課に新入社員として入ってきたタナベは、すぐに「愛」を持ち出して、それで物事を測ろうとするが、それは彼女が頭でっかちの理想主義者だからだ。そして新人というのは、しばしば頭でっかちで理想主義者である。彼女は、空気を読むことが不得手な人物だが、別に社会からはみ出しているわけではない。
しかしだからこそ、アニメのタナベは、Phase11「バウンダリー・ライン」のような不条理に満ちたこの世の中にあって、「お前がいう愛は本物かどうか」を試されることになる。

ハチマキとタナベの物語

Phase24「愛」。テロリスト・宇宙防衛戦線のテロにより、月面に投げ出されたタナベと同僚のクレア。クレアは太ももを怪我して自力で歩くことができない。絶体絶命の状況に置かれたタナベは、クレアを背負い、計算上は酸素残量ギリギリで到達できるはずの最寄りの有人通信施設を目指す。けが人を置いていけばタナベは助かる。だが、タナベはそのような生き方ができる人間ではない。そしてけが人を担いで歩いた結果、予想よりもはるかに多くの酸素を消費してしまい、通信施設に辿り着く前に酸素不足のアラームが鳴り始める。

原作『プラネテス』は終幕に、主人公ハチマキの「愛し合うことだけがどうしてもやめられない」という言葉を置いた。
この言葉をハチマキにいわせるため、アニメは、原作に準拠しつつ、木星往還船「フォン・ブラウン号」の乗組員になるため、自らを研ぎ澄ましていくハチマキの姿を丁寧に描いた。そしてハチマキは、社会から距離をとり自分の内側へとどんどん掘り進んでいく。しかしその果てに、彼はついに内破して、自分なりに「世界のあり方」を体感する。ハチマキは、社会にあるものすべてが繋がって、自分を構成していることに気づく。

タナベに与えられた試練はこのハチマキの“内破”の過程と対になるエピソードといえる。そこまで突き詰めなければ、この不条理に満ちた世の中で、「愛し合うことだけがどうしてもやめられない」ということはできない。
TVシリーズ前半の、社会とそこに生きる人々を感じさせるエピソードの積み重ねは、このようにして主人公ハチマキと副主人公タナベの物語を裏打ちしているのである。『プラネテス』の魅力はそういう部分にある。

text/藤津亮太

<発売情報>

プラネテス Blu-ray Box 5.1ch Surround Edition
好評発売中
税込価格:¥55,000
 

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税込価格:¥16,500

<再放送情報>

2022年1月よりNHK Eテレにて毎週日曜夜7時~放送中


▼『プラネテス』公式サイト
http://www.planet-es.net/

©幸村誠・講談社/サンライズ・BV・NEP

2022/03/28
『プラネテス』(前編)[特集サイト「プレイバックエモーション]【イマレコ!-今コレをレコメンド!】

NHK Eテレにて毎週日曜 午後7時00分より放送中のTVアニメ『プラネテス』をイマレコ<-今コレをレコメンド!->!
漫画『プラネテス』をTVアニメ化するにあたって、より作品の魅力を増幅させるに至った新設定を前編・後編で紹介!

「登場人物たち=会社員」という設定

TVアニメ『プラネテス』は幸村誠による同名マンガが原作だ。原作もアニメも、デブリ(宇宙ゴミ)回収を仕事とする主人公ハチマキを中心とした物語という点は変わらないが、アニメ化にあたり大きく設定が変わっているポイントが2つある。その1つが、ハチマキがテクノーラ社という企業に所属しているという設定だ。
テクノーラ社は宇宙産業関係の大企業という設定。ハチマキが所属するデブリ回収チームも「デブリ課」という同社の一部署という位置づけになっている。そしてこのデブリ課は「半課」と呼ばれ、社内でもお荷物扱いされている、問題のある部署なのだった。

このアレンジは『プラネテス』という作品に「お仕事もの」という切り口を与えるためのものだ。「低軌道でデブリを回収する」という、一般視聴者には縁遠い題材を「会社の仕事」という設定にすることで、身近に感じてもらおうというわけだ。このアレンジに伴って、デブリ課の課長や、事業部長のドルフ、ハチマキの同僚として管制課のクレア、航宙課のチェンシンなどのオリジナルキャラクターが新たに配された。

こうして「お仕事もの」という切り口が加わった結果、『プラネテス』の世界の“解像度”は大幅にあがった。原作ではキャラクターの内面に近寄っていた“カメラ”が、アニメでは少し引き気味になり、そこに「人々の暮らし」や「社会情勢」というものが映り込むことになった。ハチマキたちがどんな世の中で生きているかが、よりくっきりと見えてくることになった。

現実世界との共通点が垣間見えるリアルなドラマに共感!

この方向性が一番明確に伝わってくるのがアニメオリジナルのエピソード、Phase5「フライ・ミー・トゥー・ザ・ムーン」とPhase11「バウンダリー・ライン」だ。
「フライ・ミー・トゥー・ザ・ムーン」は、月へ向かうルナフェリーの中でハチマキやタナベたちと乗り合わせた乗客たちが繰り広げる、ややドタバタ色のある内容だ。登場するのは、借金を理由に心中を覚悟した親子連れ、タナベの財布をするスリ、それにあやしげな映画(AV)撮影クルーなどなど。彼らはそれぞれの立場で人生を語る。
これだけ取り出せばごく普通のエピソードなのだが、実は彼らは、その後のエピソードの中でも折に触れてその姿が点描されていく。彼らもまた彼らの人生の中では“主人公”であり、そういう多くの人々によって世間は構成されているのである。

「バウンダリー・ライン」は、小国エルタニカの技術者テマラが、独自に開発したEVAスーツを採用してもらうために奮戦するという内容。エルタニカは経済封鎖と内戦で国情はボロボロ。テマラはそんな国を立て直すには技術立国しかないと思い、仲間とともにEVAスーツを開発したのだった。このエピソードには「内戦」「南北格差」「非常な国際政治」といった要素が詰め込まれている。

「フライ・ミー・トゥー・ザ・ムーン」が「世間にはいろいろな人がいる」だったのに対し、「バウンダリー・ライン」はこの世の中にはどうしようもないこと(不条理)が存在することを描く。バウンダリー・ライン(国境線)はその象徴といえる。
「お仕事もの」を入り口に、そのような世の中のあり方を見せてくれるのがアニメ『プラネテス』なのである。

text/藤津亮太

<発売情報>

プラネテス Blu-ray Box 5.1ch Surround Edition
好評発売中
税込価格:¥55,000
 

EMOTION the Best プラネテス DVD-BOX
好評発売中
税込価格:¥16,500

<再放送情報>

2022年1月よりNHK Eテレにて毎週日曜夜7時~放送中


▼『プラネテス』公式サイト
http://www.planet-es.net/

©幸村誠・講談社/サンライズ・BV・NEP