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2026.08.21

サンライズワールド クリエイターインタビュー 第27回 キャラクターデザイン、作画監督、アニメーター 吉松孝博さん <後編>

 

サンライズ作品のキーパーソンとなった人物に自身の関わった作品を振り返ってもらうクリエイターインタビュー。今回は2026年で35周年を迎える『新世紀GPXサイバーフォーミュラ(以下、サイバーフォミュラ)』のキャラクターデザインと作画監督を務めた吉松孝博さんが登場。<後編>では、『サイバーフォーミュラ』のキャラクターデザインへのこだわりや作品に関わる中でのスタジオでの思い出などを中心に振り返ってもらった。

 

――デザインを進める中で印象に残っているキャラクターや作画しながら描きやすいキャラクターなどがいれば教えてください。

吉松 OVAシリーズに出てくるライバルキャラのアンリ・クレイトはキャラクター的にいいネタがないかと探していて、いのまたさんが手掛けていたゲームのキャラクターデザインにちょうどいい雰囲気のものがあったのを参考にさせてもらいましたね。ランドルは途中から登場するライバルキャラということで、他のキャラクターに負けないようなインパクトが欲しいなと思って、髪の毛の質はフワフワで、おでこを出したりするのが面白いかなとデザインしたのも覚えています。さっきも名前を出した大友は『魔道王グランゾート(以下、グランゾート)』に登場するガスというキャラクターがもとになっています。劇中で魔法によってガスが大人になる話があって、そのデザインを担当させてもらったんですが、とても評判が良く。だから大友の元ネタはガスですね。

――『サイバーフォーミュラ』のキャラクターは、髪型に特徴的な人物が多いですね。

 

吉松 芦田さんからキャラクターデザインをするときのコツというかヒントを教えてもらったことがあって、それが「自分が思っているよりも髪の毛を逆立てろ」だったんです。その結果、『サイバーフォーミュラ』では、ハイネルやブリード加賀もそうですが、髪の毛が逆立っているキャラが多いですね。


――ライバルドライバーの中でも、ブリード加賀はすごい人気キャラクターになりましたね。

吉松 デザインを手がける際には、福田さんから「ヤンキーで激しいお兄ちゃんキャラなので、もっと荒々しい感じにしてくれ」、「三日月の傷を付けてくれ」というオーダーがありまして。それで逆立てた髪にメッシュを入れたりというデザインになりました。お下げはいのまたさんのラフの名残ですね。

――加賀は女性人気がアップするきっかけにもなったように思います。

吉松 そうですね。当時、加賀宛てのバレンタインデーのチョコとかプレゼントをたくさんいただきましたね。そういう意味では印象深いキャラクターではあります。当時、僕宛にもファンレターをたくさんいただいて。全然返事を書けなくて申し訳なかったなとも思っています。

――『サイバーフォーミュラ』は放送開始当初は男子児童向けのレースアニメという感じでしたが、どんどん女性ファンが増えて、ファン層も大きく広がりましたね。

吉松 お客さんが喜んでくれているのは非常にありがたく、励みになりましたし、作業をしながらより一生懸命力を入れていった感覚はあります。一生懸命やっても全く反応がない作品もあるので、いろんな方から反応があるのは嬉しいですね。

――『サイバーフォーミュラ』はその後OVAという形でシリーズが続くことになった際にはどんな思いを持たれていましたか?

吉松 TVシリーズの時は毎回反省点がありまして、OVAはそれを挽回するチャンスを何回もいただけたという感じで捉えていました。TVシリーズだと、基本は影なしベースで作画していたので、OVAだと影つけもできて、目に虹彩を入れたりとか、髪の毛の塗り方も凝ったものになったりとちょっと豪華に描くこともできましたし。それはメカにも共通していますが。月日が流れているということで、頭身も含めてその都度キャラクターの設定は描き直しをさせていただきました。

――テレビシリーズの頃はまだメカ作画監督というポジションは無かったと思いますが、吉松さんがメカの作画監督もやられていたのでしょうか?

吉松 メカ専門の作画監督はいなくて、作画監督として僕がチェックはしていましたが、ほぼメカには修正を入れていないです。メカが得意な原画マンが何人かいましたし、その方々が個性をたくさん入れて描いてくれていたので。うちの会社では担当するカットをあみだくじで決めていたんですが、僕はうまいことメカのところが当たらなくて、その分作画監督作業とキャラに集中できたという印象です。アニメの神様はあみだくじでうまい具合にメカが得意な人のところにメカが行くように導いてくれていました。ところが、OVAの時にあみだくじシステムでオープニングのメカを山ほど描くことになり、その時は大変でしたね(笑)。クルマは本当に難しいです。ロボットだったらシルエットで描くことができるんですが、タイヤをきちんと接地させてシャープな感じを出すのには苦労しました。

――『サイバーフォーミュラ』では、本編以外にもマンガや版権イラストなども手掛けられていますね。

吉松 アニメージュやアニメディアの方でも毎月マンガを描かせてもらって、『すかっとサイバえもん』という単行本も出していただきました。憧れていたマンガ家にはなれませんでしたが、遠回りしてインチキマンガ家にもさせてもらえたのは嬉しかったです。版権イラストやマンガの仕事は、アニメ作業で追い詰められている時に気分転換にもなるんですよね。版権イラストは季節物の依頼とかもあって、いろいろと遊ばせてもらった記憶があります。作業に関しても誰かひとりが描くのではなく、会社内でレイアウトやラフを手分けしたり、メカとキャラは別々に担当するという形で仕上げていきましたね。

――福田監督とのやり取りなどで印象に残っていることはありますか。

吉松 福田さんは『魔神英雄伝ワタル』や『グランゾート』の演出ですごく面白い回の演出をやられていたという印象があり、福田さんと組むといいフィルムができるというすごく信頼の厚い方でした。メカ描写が抜群に上手くて、『魔神英雄伝ワタル2』の時にはメカのポーズやアクションをたくさん直されました(笑)。アニメーター出身じゃないのに絵も上手くて、レイアウトの中にどうメカを配置すると格好いいという感覚が鋭かったですね。『サイバーフォーミュラ』の打ち合わせをするようになってからは、僕は作画の枚数がかかるんじゃないかという不安があったんですが、「大丈夫だよ、ここはギュインって通り過ぎるから奥に詰めればいいだけだから」という話をされて「本当ですか!」って作業に入ったんですが、そんなことはなくて大変でした(笑)

――『サイバーフォーミュラ』では、撮影処理によるエフェクトや撮影効果にってスピード感を演出されていて、それが臨場感につながっていたと思います。

吉松 そのあたりは演出的にもすごいテクニックだと思いましたね。劇中のブーストの火花とかすごく綺麗ですが、あれ、実はOVAの最終回の頃になると福田さんが手作業で透過光の撮影用の素材を作っていたんです。撮出しの部屋に福田さんが籠もってラシャ紙と呼ばれる黒い紙に千枚通しで穴を開けて作っていました。奥の部屋からガガガッと穴を開けているのと、咳払いの声が聞こえて。シリーズの最終回が近づくとその作業が始まるので、毎回「ああ、この季節がやってきたな」って思っていました。

――福田さんとはわりと密にやり取りをされていたんですね。

吉松 OVAシリーズが始まって、僕がサンライズのスタジオに入るようになってからのやり取りが多かったですね。スタジオでの思い出と言えば、メカデザインの作業をするために河森正治さんがサンライズにいらっしゃっていて、机を並べて仕事をしていた時期があるんです。そのときにいろいろと河森さんと雑談したのは楽しかったですね。とても話題豊富な方で、いろいろと勉強になりました。

――『サイバーフォーミュラ』は今年で35周年を迎えて、吉松さんもアニバーサリービジュアルで参加されていますが、現在の感想はいかがですか。



吉松 35年も前の作品が未だにこうやって話題に上がってくれるのはすごくありがたいことだなと思っております。『サイバーフォーミュラ』のおかげで今の僕があると思っているので、35年前に『サイバーフォーミュラ』に出会えて良かったです。最近だと、関わったアニメ作品のプロデューサーをやっている方とかが『サイバーフォーミュラ』のファンだったというのは結構よくあります。お話をするとすごくキラキラした目で見られるというか。ありがたいですね。逆に若い子は全然知らないと言われることもあります。

――35周年アニバーサリービジュアルは、どのような思いで描かれたのでしょうか?

吉松 当時の絵をできるだけ再現しようとは思っているんですが、それはなかなか難しかったです。でも、そうした挑戦は面白いですね。今後もできるだけ昔の絵に近づけるよう努力します。改めて昔の自分の仕事に向き合うのは、恥ずかしいのも半分、面白いのも半分という感じで、当時は当時で頑張っていたんだろうなと思えるので。そんな思いを持ちながら描かせてもらいました。

――35周年を迎えた現在でも作品を応援してくれているファンにメッセージをお願いします。

吉松 当時のセルアニメの制作状況なども含めて、今の目で見ると拙い部分があるかもしれませんが、改めて『サイバーフォーミュラ』を見られるときには、どうかお手柔らかに。優しい目で見て欲しいです。頑張って最後まで見続けていただければ、最終話の直前で奇跡のようなフィルムに出会えます。あれはもう、自分が関わっている作品ながら「アニメでこんなことができるのか」と心が高まりました。あれはスタジオライブの西村聡が演出とコンテを担当しているんですが、その技量と音の付け方が神がかっていて、全てが奇跡のようなフィルムでしたので、ぜひそれを再び味わっていただきたいです。自分としても、『サイバーフォーミュラ』はすばらしい代表作との出会いであり、そこからいろんな方との付き合いも増えた作品でした。亡くなられてしまいましたが、いのまたさんとも仲良くなれたのはいい思い出です。人生が変わった作品でもありますので、今後とも応援していただければと思います。

――それでは最後に、今後アニメーション業界を目指す方にアドバイスをお願いします。

吉松 僕はアニメーターなので、アニメーターを目指す方へのアドバイスになってしまうんですが、絵の実力ももちろん必要ですが、やはりコミュニケーション能力を磨いてきてもらえればと思います。アニメーション制作は集団作業で、どうしても人付き合いが発生します。そこでは人に可愛がられる能力というか、「あいつに任せよう」って思ってもらえる人間性があると有利だなと思います。それから、何か得意技を磨くことも大切です。キャラだけが得意とか、メカだけが得意というならそこを突き詰めていくと、自然とほかのパラメーターも上がって、苦手な分野も総じて描けるようになるので、とにかく自分の売りをはっきりさせるというのは業界で長生きできるコツだと思いますね。そして、絵を描くときは人に見てもらう。表現というのは外に向けないといけないですし、芦田さんがよく言っていたのは「ウケてなんぼ」。独りよがりにならず、見ている人に楽しんでもらわないといけないので、お客さんを意識して描くことも大事だと思います。

<前編>はこちら>>


(プロフィール)
吉松孝博(よしまつたかひろ)
1965年(昭和40年)8月27日生まれ。大阪府出身。スタジオライブ所属。代表作は『新世紀GPXサイバーフォーミュラ』『劇場版スレイヤーズ』『TRIGUN』『十兵衛ちゃん』『学園戦記ムリョウ』『大江戸ロケット』『牙』『バスカッシュ!』『宇宙よりも遠い場所』『からくりサーカス』『HUNTER×HUNTER』『グッバイ、ドン・グリーズ!』等。サムシング吉松のペンネームでマンガ家としても活躍中。

 

 

『新世紀GPXサイバーフォーミュラ』35周年フェスティバル-栄光のウイナーズ-

詳細はイベント特設ページをご覧ください!

https://www.cyber-formula.net/event/35th/