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2026.06.10

サンライズワールド クリエイターインタビュー 第25回
アニメーター 佐野浩敏

 

サンライズ作品のキーパーソンとなったスタッフに、ご自身の関わった作品の思い出を語ってもらうクリエイターインタビュー。今回は、6月27日から福岡県の田川市美術館にて原画展「伝説のアニメーター 佐野浩敏の仕事」が開催される、アニメーターの佐野浩敏さんが登場。サンライズワールドでは、恩師である安彦良和さんの影響、大きな挑戦となった劇場版『エスカフローネ』へのこだわり、そして展覧会へ向けた思いを伺った。


――『天空のエスカフローネ』は、ガンダム作品とはメカの描き方の方向性が全く違っていましたね。

佐野 『天空のエスカフローネ』がガンダム作品と何が違うかと言えば、「ガンダム」ではほとんどの場合は銃を持っていたり、バルカンなどの飛び道具があるんですよね。だから、相手の懐まで行かなくていいんですよね。撃った、飛んだ、当たったというカットを作れば作劇できるんですが、『天空のエスカフローネ』の武器は剣がメインなので、相手の懐まで行かなければならない。そこまで走っていくのか、歩いていくのかというのを見せなくてはならないので、演出さんも大変になってくる。アニメーションはスピード感を出して、メカが手前に来るとか奥にいくという動きさをせて見ている人たちが喜ぶような画作りをする必要があるんです。でも、『天空のエスカフローネ』では、そこはちょっとオミットしつつも、カタルシスや爽快感を出さなければならない。そこでは苦労しましたね。

――剣での戦いになると、敵味方が1場面に入るシーンがすごく多くなりますよね。

佐野 アニメーターなので、そこは描かなければならないんですが、僕の場合はどうしても時間がかかってしまう。銃は撃てばいいだけなんですが、剣だと振りかぶって振り下ろし、相手に当たればその瞬間のリアクションもありますからね。どうしても時間がかかったという印象はあります。あとは、マントも苦労しました。当時はインタビューなどで「後ろを向かせるとディテールを描かなくてもいいから楽だ」なんて言っていたんですが、楽な反面、絵として映えないし、単調になってしまう。それだと見ている方には申し訳ないので、描く際には気を使いましたね。

――サンライズでのスタジオの思い出はありますか?

佐野 サンライズの第2スタジオで『機動戦士Zガンダム』の制作をしていて、僕はそこで作業をしていたんですが、同じビルの1階に第1スタジオが入っていて、そこで安彦さんが『アリオン』を作られていて。尊敬するアニメーターだったので、これは挨拶にいかなくちゃとスタジオに伺って。それが安彦さんとの初対面だったので今でも印象に残っています。サンライズのお仕事と並行して、他の会社の作品にも携わっていたんですが、サンライズは他社に比べてひとつのフレームにロボットがたくさん出てくるので、そこが大変だったという印象があります。『銀河漂流バイファム』はその代表ですね。

――画面で描くメカにもサンライズらしい特徴はありましたか?

佐野 あまり派手にしちゃいけないのかなという印象もありましたね。あくまで若手のアニメーターとしての当時の僕の印象なんですが、サンライズの作品は、ちょっと地味というか、透過光で画面が光ったりする見せ方が少なく、『機動戦士ガンダム』にしても『装甲騎兵ボトムズ』にしても泥臭い感じで、色味も派手なカラーリングではなく、例えばザクだったら緑一色のベタで。地味だなと思っていましたね。実際にお仕事をするようになっても、地味だけど大変というのがサンライズのメカ作画の印象ですね。

――「リアルロボットもの」というジャンルが、それまでのスーパーロボット的な流れとは違って地味な感じになったのかもしれないですね。

佐野 そういった流れの中で、『機動戦士ガンダム0083 STARDUST MEMORY(以下、0083)』はプロデューサーの植田益朗さんから「映像を派手にしてね」と言われた記憶があります。それは、イメージ的にこれまでのガンダム作品に比べると派手に、グルングルンと激しくアクションをするガンダムにして欲しいということでした。ただ、最初の頃は慣れていないせいか僕の作画スピードが遅くて、僕が全然描けなかったんですよね。でも、作業が進む中でスタッフの作画スピードも上がってきて、僕もだんだんペースが上がってきました。そうした勢いみたいなものが制作の中盤から出てきて、最初の頃に比べるとスタッフの中でもチームワークができてきたかなという感じがありましたね。実際に画面を見ると、それが伝わりますし、熱いものを作っているなという感じもありましたね。


――いろいろと一緒にお仕事をされてきた方がいらっしゃると思いますが、お世話になったと思うクリエイターやプロデューサーはどなたがいらっしゃいますか?

佐野 プロデューサーだと、内田健二さん、植田益朗さん、南雅彦さんですかね。クリエイターでいえばやはり安彦さんです。アニメーションの全体的なことは安彦さんに学ばせていただいた感じはありますね。総合的な演出や作画、絵の作り方やキャラクターの作り方、さらには色指定の方との付き合い方とか。安彦さんのもとで仕事をしながら学ぶことができたのは自分の中では大きいです。安彦さんはすごくいろんな挑戦をされる方で、素晴らしいですし、いろいろと教えてくれる心の大きさが安彦さんにはあると思います。

――サンライズ作品では、ほかにも『カウボーイビバップ』、『アルジェントソーマ』などにも参加されていますね。

佐野 そうですね。毎回、タイトルも違えばメカの見せ方も変えますね。同じだと楽ではあるんですが、面白味がなくなってしまうので、変えていかないといけない。先ほど言った『天空のエスカフローネ』はオープニングでは、通常だと3コマ打ち(1秒間に24フレーム中8枚作画をする)でやるところを、1コマ打ち(24フレーム中12枚作画をする)を提案して、やらせてもらいました。オープニングで何かイメージの違うことをやらないと、インパクトのある画面が作れないので。視聴者の方にも「何か違うぞ」って思って欲しかったというのもあります。劇場版『エスカフローネ』でも一部のシーンで1コマ打ちでやらせてもらって。絵で描くというのは、沈んで見えるかもしれないですが、3Dとは異なる迫力が出せるんですよね。本当は、劇場版『エスカフローネ』では全部1コマ打ちでやりたかったのでその提案もしたんですが、さすがに通らなくて。実作業をするとカロリーが高くなってしまうので大変だろうと思いますが、今でも全編1コマ打ちでの作品をやってみたいとは思いますね。


――劇場版『エスカフローネ』も大きな挑戦だったわけですね。

佐野 そうですね。劇場版『エスカフローネ』をやって、その次にまた同じようにするのが嫌で、だんだん自分のオリジナル作品が作りたくなっていったんです。その頃には自分で作品を企画してサンライズさんに提案したりもしていました。そうやって、仕事の仕方に悩んでいるうちに、絵的にはアニメをあまりやらずにイラストの仕事の方に主軸を置くようになりまして。だんだん、一枚絵で勝負したいという気持ちが出てきたという感じですね。

――その頃は、ガンダム関係のイラストなどもたくさん手掛けてらっしゃいましたね。

佐野 そういう時期もありましたね。僕自身がやはり安彦さんの描く絵が好きだったというのもあって、あのフォルムの取り方が身についていると言うとおこがましいですが、そこをベースにして自分らしく描いていければと思っていました。安彦さんの流れるように描くガンダムをどれだけ追いかけられるかという感じですね。

――今回、佐野さんの地元である福岡県の田川市美術館で展覧会が行われますが、どのような絵が飾られるのでしょうか?

佐野 仕事で関わって現存しているものの中から、美術館の学芸員の方にセレクトしていただいた形です。僕が保存していたもののほかに、友人が持っていたものを借りたりしています。差し上げてしまったものも結構あったので。一枚絵として完成している、イラストや版権で描かせていただいたもののほかに、アニメーション用の原画がたくさんあるので、そちらを飾っていただきます。久しぶりに自分が描いたものをみたんですが、「こんなに描かなくてもいいだろう」とか「こんなに描いていたんだ」と驚くような原画がたくさんあったので見応えはあると思います。『0083』に関しては、オープニングの原画も含めて、こんなにたくさん見る事ができるのは初めてではないかと思います。メカだけではなく、キャラクターの絵も飾っていただいているんですが、そちらはパパっと描いたものがたくさんあるんですが、こういう感じで描くのも楽しいなと思っていただけると嬉しいですね。

――アニメ好きにはかなり楽しめそうな内容ですね。

佐野 そうですね。僕の場合はいろいろ描いていますから、いろんな方向から絵を楽しんでもらいたいです。そして、僕の絵を見て興味を持ってアニメーション業界に入ってくる方とがいたらいいなとも思いますね、

――今回は、絵だけではなく、映像も展示されるそうですが、そちらのセレクトは佐野さんが指定されたそうですね。

佐野 そうですね。劇場版『エスカフローネ』の戦闘シーンと『0083』の原画が飾られているパートを選んでいます。やはり、描かれた原画が映像になるとこう見える、逆に映像を見て原画はこう描かれていると観ている方々に理解していただけると思うので。実際に美術館ではどのように展示されるか楽しみです。

――その他、会場ではライブドローイングもされるそうですね。

佐野 覚えているものじゃないとすぐに描けないので、『機動戦士ガンダム0083 STARDUST MEMORY』や『機動武闘伝Gガンダム』のメカが多くなるかなと思います。その場でマジックで描くのか、色までつけるのかはまだ未定ですが、ぜひ足を運んでもらって、「描く」ところも見て欲しいですね。

――では最後に、今後アニメーション業界を目指す方にアドバイスをお願いします。

佐野 アニメーションを学ぶにあたっては、やはり「動き」=モーション感覚を持って欲しいというのはありますね。いろんな動きを観察して身に着けておくといいと思います。また、たくさん絵を描いて、描くスピードを身につけておくといいかなと。僕は遅かったんですが、上手い人は手が早いですし、その方がたくさん仕事ができますから。若いうちからそういう感覚を身につけておくと後々に役立つと思います。


佐野浩敏さんがアニメ業界に入った経緯や『機動戦士ガンダム0083 STARDUST MEMORY』、『機動武闘伝Gガンダム』などはGUNDAM Official Websiteにて掲載。
そちらもあわせてお楽しみください。


GUNDAM Official Website
https://gundam-official.com/news/tmndehprzqdyj9bju87pj74j


伝説のアニメーター佐野浩敏の仕事
会期:2026年6月27日~8月23日
観覧料:一般 1,000円(900円)
高大生 500円(400円)
小中生 200円(100円)
未就学児 無料
※( )内は20名以上の団体および田川市在住者[要身分証明書]※身体障害者手帳、療育手帳、精神障害者保健福祉手帳の交付を受けている方とその介助者1名無料
※土曜日は高校生以下無料


田川市美術館「伝説のアニメーター佐野浩敏の仕事」
https://tagawa-art.jp/schedule/sano-hirotoshi-exhibition/